上田氏によると、添付文書やインタビューフォームなど、製薬企業から提供される医薬品情報は簡単に入手することはできますが、実際の医療の現場で必要とされる情報はそれだけではありません。「医薬品の欧米での承認状況や用法用量、日本との使用例の比較、日本で承認されている以外での利用など、さまざまな情報を必要とします。そして当然ながら、実際の臨床判断に用られる情報は、強いエビデンスに裏付けられた信頼性の高いものであることが必要です。通常、日本においてこのような医薬品情報を収集していくことは容易なことではありませんが、 Lexicomp や UpToDate®にはこれらの情報がまとめられています。 Lexicomp/UpToDateの情報とFINDAT独自の解析技術を組み合わせることで、信頼性の高い医薬品の適正使用情報を迅速に提供することが可能になると感じています。 」と上田氏はいいます。
日本調剤では、疾患に対する薬物治療の情報を収集するために、臨床意思決定支援リソースUpToDateも利用しています。その上で、「各薬剤の詳細な情報、たとえば新薬の臨床試験の評価や、欧米での承認情報などの詳細な情報源として、Lexicompを利用しています。」(上田氏)
海外での医薬品情報収集には、ツール利用が一般的
上田氏は、イギリスで薬剤師として活躍されていた時期があり、その経験を次のように語ります。「イギリスの国営医療サービス(NHS)の医薬品情報ネットワークでは、その情報源として、Lexicompのような医薬品情報リソースの利用が推奨されていました。」
「その後帰国して勤務した日本の医療機関ではUpToDateが導入されており、そのモノグラフ機能としてL e x i c o m p を利用するようになりました。Lexicompの良いところは、他の英語の医薬品データベースと違い、日本語での検索でも情報を収集できることです。もちろん、英語での情報収集も行いますが、日本語で検索したときに何も情報が出てこない場合、『日本にしか承認されていない医薬品』と捉えることもできます。」日本調剤では複数のツールを使い分けているという。「私たちは、医薬品に関する情報として、疾患のガイドライン等網羅的に情報収集を行います。UpToDateと併用することで、グローバルな治療の位置づけや疾患の情報も収集することができます。それらを総合的に評価、日本における臨床現場に役立つ情報を選別し、FINDATにおける高度DIとしてとりまとめています。」
世界で通用し、日本の臨床で役立つ医薬品情報を提供するために
「FINDATのコンテンツの質を担保するため、ワークフローの中に『Lexicompで情報収集し、更に詳細な情報が必要であれば、PubMed検索を行う』というプロセスを導入しています。このプロセスが入ることで、コンテンツの作成者が変わっても情報の再現性が高くなりました。情報収集の効率化も図れていると思います。」と上田氏はいいます。
上田氏は最後に、「FINDATを通じて医療機関や調剤薬局などの臨床業務に必要な医薬品情報ネットワーク構築を目指すことで、医薬品情報が標準化し、維持可能な医療の提供に薬剤師が貢献できる。 また、FINDATは、医学・薬学教育にも活用できると考えています」と語りました。「医療においての医薬品情報は中立であるべきで『薬剤を選択する』という患者さんにとって大きな問題に対し、Lexicompのようなツールを活用して、広く情報を集めて精査するという手法手段がもっと浸透すれば、より良い医療の提供につながっていくのではないでしょうか。」