これまで病院チームは実務に追われ、質改善の取り組みに時間も労力もほとんど割けずにいました。残念なことに、COVID-19パンデミックがこのストレスに拍車をかけ、看護実習生やレジデントから看護師、医師、そして病院や医療システムのあらゆる分野や部署にいたる誰もにストレスをもたらしました。
米国では、 COVID-19 の負担が大きいことから、メディケア・メディケイドサービスセンター(CMS)は、医療保険取引所の質評価システム、QHP登録者経験調査(QHP Enrollee Survey)、質改善戦略プログラムに関するデータ収集および報告義務を緩和しました。その結果、CMSは質評価システム下で2020年度の質を算出していません。しかし、COVID-19の最中とはいえ質改善を途中で止めることはできません。現にこのウイルスに対抗するには、様々な問題の中でも特に感染予防や遠隔医療等を重視したQIイニシアチブが必要でした。
パンデミック収束までは当面かかると考えられ、患者が殺到しようと人手不足だろうと、病院はQIプログラムを継続しなければなりません。かつてない混乱の中で、この時間のかかる非効率的な質改善の苦痛を軽減する方法はあるのでしょうか。
ケアの質改善の勢いは止まらない
BMJに掲載されたある論文によると、このパンデミック中も質改善の動きは顕著であったことが報告されています。英国における健康およびケア改善に取り組む225名を対象に行った調査では、半数以上がCOVID-19中も質改善の影響は大きかったと回答しています。この論文は、パンデミック時にQIが適用された5つの方法について述べています。
- 複雑な問題にどう立ち向かうかについての共通理論の構築
- プロセスの理解と改善
- 十分な知識のもと意思決定を行うために測定結果を活用
- 速やかな検査および計測のための、計画(Plan)、実行(Do)、評価(Study)、改善(Act)(PDSA)サイクル活用
- 将来に向けた学習と見直しの支援
著者らは、特定の質改善アプローチは、パンデミックのような非常にストレスに満ちた状況下であっても複雑な問題の解決に有効である、と結論づけています。また、成功を持続させるには、病院は選択した改善方法を取り入れ、持続的な改善手段の一環としてツールを使う必要がある、とも述べています。
米国の病院では、COVIDがもたらした質改善もみられました。クリーブランドクリニックのQIチーム は、新型コロナウイルス感染症と診断が確定している患者やその疑いのある患者のケアのため、介護者を保護しつつ多くの対策を実行しました。同チームは、「パンデミック中の質改善には、動的でサイクルが速いPDSAアプローチが必要である。パンデミックのような災害時に質改善を持続させたい場合、調整、プロトコル策定、変革の実装など、あらゆるレベルにおけるリーダーシップが鍵となる」と結論づけています。
Pediatric Quality and Safety では、ボストン小児病院救急科のAshley A. Foster医師とAnne M. Stack医師が次のように説明しています。「パンデミック当初、病院がすべての患者に最高レベルのケアを提供し続ける一方で、頑健なQIプログラム — 進行中の様々な取り組みも含む — が、ウイルスを保有する患者を安全に取り扱う必要があるとしてことごとく中断されました。その反省を踏まえて、この病院はCOVID-19にも対応した新しいQIのフレームワークを作り、今なお重要なQIの取り組みを維持し、促進しています」
QIプロジェクトをストレスに満ちたものにしない
COVID-19が予測可能な将来の病院のケア(および質)と無関係ではないことがわかっている以上、 QIプロジェクトの負担を抑えつつ 、その成功可能性を高める手段を見つけなくてはなりません。まず、質改善プログラムを複雑にしている要因について考えてみましょう。
- 貴院のQIプロジェクトはどれも人手によるマニュアル作業に頼っていないか?
- プロジェクトチームに標準化されたワークフローはあるか?
- 連携やコミュニケーションがとりにくい環境ではないか?
- 過去のQIプロジェクトについて調べやすいか?
- 関連性の低い研究や時代遅れの研究にとらわれていないか?
- 得られた知見を要約、発表することに苦労していないか?
- QIに関する推奨提言がなし崩しになっていないか?
最適なソリューションを活用して質改善のための取り組みを計画すれば、このような状況にはなりません。標準化されながらも変更可能なワークフローテンプレートを備え、アプリケーション内でチームの議論を促進するソリューションが必要なのです。統合検索は、一流かつ最新の研究を見つけるのに役立ちます。評価ツールはデータ抽出に有用です。QIプロジェクトチームがエビデンスと報告から得られた知見を併合し、実装に移すことを可能にするプラットフォームが理想的なのです。
COVID-19と質改善両方に対応する
質を改善するプロセスであらゆることが行き詰ってしまったとき、QIプロジェクトチームをまとめたり、メンバーの情熱を取り戻すには困難を伴います。非生産的なプログラムはスタッフの意欲も削いでしまい(「ここでは何も変わらない」)、従業員の心が離れ、雇用の維持も難しくなります。しかし最適なテクノロジーを選択することでQIプロジェクトはより活性化します。そうすれば、パンデミック中も、パンデミック後も、貴院の質改善プログラム、従業員、患者、そして貴院の収益も、すべてが利益を享受できることでしょう。
Ovid Synthesisの包括的なワークフロー、AIを活用した最先端の検索、連携ツールが、質改善プロジェクトによるストレス軽減にどれほど役立つかご覧ください。