Young female student study in the school library using laptop
ヘルス16 6月, 2021|更新された10月 25, 2021

リモート解剖学指導への移行:パンデミック時のイノベーションが未来のカリキュラムを変える

Covid-19パンデミックを契機とするリモート指導への移行に対応して、全世界の医学部が創意工夫を行ってきました。

仮想学習用医学カリキュラムの多くの面でデジタルツールが活躍しましたが、バーチャルでの指導が本質的により困難なものもあります。その1つが解剖です。解剖学の教員には、学生が実際に遺体を調べることができないリモートのオンライン環境で解剖実習を再現する、という課題が課されました。

ウォルターズ・クルワー社のヘルス・ラーニング・リサーチ・プラクティス事業部メディシン部門バイスプレジデント兼ゼネラルマネージャーであるVikram Savkarが司会を務め、ミシガン州ロチェスターにあるメイヨー・クリニック臨床解剖学部解剖医学教育教授であり『Anatomical Sciences Education』編集長のWojciech Pawlina博士にお話を伺いました。Pawlina博士は、パンデミック中にメイヨー・クリニックがいかにして解剖学カリキュラムをハイブリッドリモート指導へ移行させたか、また、どのようにプログラムの将来像を構想したかについて解説いただきます。

解剖学指導を成功に導いた3つの変化

1. 肉眼解剖学実習室のライブストリーミング

学生と教員は解剖学実習室で一緒に授業を行うことはできませんでしたが、Pawlina博士らは、学生には通常であれば肉眼解剖実習室で得られたはずの実習体験を、一部でも良いから経験して欲しいと考えました。そこでPawlina博士のチームは、解剖実習室を解剖のライブ映像作製スタジオへと変えたのです。教員は、解剖材料を実習室から直接ライブ映像で公開し、献体の一部を繰り返し見せたり、様々な角度から見せるなどして、学生がリアルタイムで質問できるようにしました。解剖は記録され、学生は都合の良い時間に何度も見直すことができます。また、学生は3人グループでオプションの実習ローテーションに参加し、解剖標本を調べたり、教員や補助教員に質問することもできます。

2. 同期学習と非同期学習の融合

メイヨー・クリニックでは、リモート指導においても、本来の患者重視の医療環境に沿った能動学習をサポートする必要がありました。Pawlina博士らは、リモートカリキュラムにチーム型同期学習を取り入れることに着目しました。臨床的に重要な解剖学的概念に基づいて毎日のインタラクティブな授業を組み立てました。これらの授業では、教員はまず概念と必要事項を強調し、次に学生に追加リソースを与えて自発的な非同期学習を行うように指導しました。学生は日々のオーディエンス・レスポンス・システム(ARS)フィードバックセッションにも参加することができます。このセッションでは、教員が学生に質問し、学生は自分のスマートフォンで回答するという振り返りを通して、能動的学習を行うとともに臨床推論を鍛えることができるようになっています。学生の回答はクラスに公開され、セッション終了時にスコアとクラス平均が発表されるため、学生は自分の成績について継続的にフィードバックを受けられます。

3. ノンテクニカルスキルを重視

Pawlina博士らは、リモート解剖学カリキュラムを作成するにあたり、チームワークやプロフェッショナリズム、コミュニケーションなど、non-traditional discipline-independent skills(NTDIS:非伝統的学科独立スキル)、いわゆるノンテクニカルスキルを向上させたいと考えました。学生は、NTDISの考え方を取り入れ、臨床現場におけるノンテクニカルスキルの重要性について説明するオンラインモジュールを使用しました。また、少人数のグループを作り、チームワークとコミュニケーションスキルを意識した作業を行いました。学生の批判的思考およびチームワークスキルを評価するため、メイヨー・クリニックは、学生のリーダーシップ、マネジメント、チームワーク、協力、問題解決、意思決定、状況認識を評価するピアアセスメントを実施しました。学生による自己の内省についての作文および自己評価も行われました。

解剖学指導の未来に対する洞察

Pawlina博士がリモート解剖学指導プログラムから得た重要な知見の1つは、リモートセッションでは、パンデミック前の対面授業と比べて学生からの質問が増えたことです。Pawlina博士は、学期を通して、学生が教員との質疑応答時間やチャットルームで、より頻繁に質問することに気付いたのです。こうした学生との新たなコミュニケーション法の発見は、より多くの助けや指導を必要としている学生がそれらを確実に得られるという意味で重要です。もう1つの知見は、チームによるインタラクティブな授業が受けられるとともに、自学用に授業の録画や追加のリソースが提供される同期学習と非同期学習の融合を学生が歓迎していることでした。

パンデミック当初よりリモート指導に速やかに適応することが求められたことから、解剖学カリキュラムの1つの要素としてテクノロジーの価値が示されました。解剖学教育の将来についてPawlina博士は、「ニューノーマルの授業は、同期学習と非同期学習を行き来できるオンライン学習と対面学習のハイブリッドになるでしょう」と予測しています。また、「献体を用いた解剖に戻っても、選択科目やレジデントプログラムの科目として、より進歩的な医学研修へとシフトしていくことになるでしょう」とも述べています。

詳しくは、ウェビナーの完全版『How the shift to remote anatomy instruction is leading to changes in future curriculum 』をご覧ください。
ウェビナーの録画視聴はこちら
Back To Top