Two Japanese male doctors in white coats looking at laptop computer
ヘルス16 9月, 2022

福島県立医科大学附属病院、医師の医学知識のアップデートと、学生の臨床能力向上を目指し、UpToDateを利用

福島県内において、臨床・教育・研究をミッションとする福島県立医科大学附属病院。三次救命救急医療を提供し、診断困難症例や多臓器に渡る複雑性の高い症例も県内外から受け入れており、最新のエビデンスにアクセスし、臨床上の疑問を素早く解決できることは、学生だけでなく、経験豊かな医療従事者にとっても重要です。臨床意思決定支援リソースUpToDate®は、大学および病院全体で導入され、臨床意思決定に活用されているほか、閲覧数は全国の国公立大学で6位*の高さを誇っています。同学でスタッフや学生向けに導入準備が進められていた12年前からUpToDateを利用されているという、総合内科の會田哲朗先生にUpToDateの導入効果について伺いました。

「疑問点があれば調べる」診療の傍らに常にあるUpToDate

福島県内における貴院の役割を教えてください。

東日本大震災から11年が経過し、県外への避難を余儀なくされていた地域住民の方も帰還が始まっており、震災後に減ってしまった医師の数も戻ってきてはいます。

しかし、県内の多くの医療機関へ当病院から多くの医師を派遣していますが、医師不足、医療資源不足な状況は続いています。

実際、当院の関連施設であるふたば医療センター附属病院へは、内科外科医師を毎日派遣して診療支援を行っており、二次救急患者さんの受入から入院支援まで対応している状況です。

当院は高度被ばく医療支援センター及び原子力災害医療・総合支援センターでもあり、全国からの除染関連の患者さんを受け入れています。

そのため、放射線関連や震災関連の研究、例えば震災時の避難や長く続く避難生活による疾患への影響、放射線による人体への影響などを研究し、世界へ発信するという役割も担っています。

Aida Tetsuro臨床医として、疑問が生じたら『調べる』ことは非常に重要です。学生も研修医も若手医師も、実習や臨床現場で何かしらの疑問はすぐに調べて自分の知識として蓄えていくことの重要性を理解し、実践していってほしいと考えています。UpToDateや他の二次文献サービスの画面を一緒に見ながら、それぞれの使い方や利点、注意点などを説明しています。
福島県立医科大学附属病院  総合内科医師  會田哲朗

先生がUpToDateを利用されるようになったきっかけを教えてください

會田先生:私がUpToDateの利用を始めたのは、医学部5年生の時です。

実習中に生じた疑問点をどう解決すれば良いかを調べていた時、UpToDateを知りました。私は福島県立医科大学出身ですが、大学内でも利用できたことが大きいですね。英語が好きだったこともあり、実習中に「疑問点があれば調べる」という習慣ができました。その時は教えてくれる人が周りにはいなかったので、自分なりに勉強しながら、UpToDateを利用するようになりました。卒業後は沖縄県内で研修医時代を過ごしましたが、そこでもUpToDateが利用できました。「疑問点はすぐにUpToDateで調べる」という習慣が、今でも継続できている理由でもあります。

実際にUpToDateを利用されたのはどのようなシーンですが?

會田先生:沖縄に居たのは、初期研修と後期研修医時代です。市中病院に勤務していましたし、当時は臨床現場での利用が主であり、かなり忙しい施設でしたので情報へのアクセスのしやすさが重要でした。沖縄県の患者さんは高齢者がかなり多い反面、食習慣の影響から若年層の糖尿病や透析患者さんが多かった印象です。そのような環境では、回診やカンファレンス後等の合間の時間でSummary and Recommendationsのセクションをさっと見る、鑑別の場面なら「鑑別」、検査内容を決定する時は「検査」の部分を読むなど、今必要な情報にすぐにたどり着けるUpToDateは、非常に重宝していました。

一方、当院は大学病院ですので、比較的重症度が高い、複雑な疾患、希少疾患の患者さんが多くなっています。原発事故に関連して精神を病む患者さんもいます。臨床現場では沖縄時代と同様にUpToDateを利用します。

さらにUpToDateは比較的珍しい疾患もカバーしており、詳細な情報を得られるのは大学病院での診療でも有意義です。教育面でもUpToDateを利用しており、若手医師や研修医や専攻医にも、一緒にUpToDateの画面を見ながら「調べることの重要性」を説いています。

臨床上の疑問点解決に利用されるUpToDate

研修医や学生の教育にどのように利用されているのかを教えてください

會田先生:私が所属する総合内科は、専攻医や研修医でも、外来診療では「まずは実際に診察をしてみる」という方針の元で教育を行っており、病歴や身体所見から臨床推論を立てることが重要と指導しています。

紹介患者さんの場合、診察までに時間があれば紹介状に記載されている主訴の部分から調べて鑑別診断を確認するなど、「予習」を指導します。時間の無い時は、私が主訴から予測する鑑別診断を元に患者さんへの問診内容を解説しますが、診察後に確認の意味で一緒にUpToDateを見ながら「UpToDateにも書かれているよね」と説明します。

こうすることで、実際の診療現場での疑問を解決するスキル、臨床推論を自分で組み立てていくスキルを養っていきます。

総合内科では、どのようなシーンでUpToDateを利用されますか?

會田先生:総合内科医としては、感染症を調べることが多いですし、血液疾患や内分泌疾患、膠原病に関連した検索も多いです。患者さんの主訴に「しびれ」「振戦」などがあれば神経に関する項目を調べます。

Aida Tetsuro総合内科はカバー範囲が広いですから、知識をアップデートしていかないといけない、という意識を強く持っています。医師として学んできたことだけではなく、その都度調べて新しい情報を得ることは、自分たちの知識のアップデートや記憶の定着に有効です。患者さんにとっても最善の医療を提供できますので、後輩たちには『知識をアップデートすること』を指導するようにしています。
福島県立医科大学附属病院  総合内科医師  會田哲朗

また、UpToDateは世界中の情報を調べることができますから、例えば日本でのエビデンスが無い疾患の患者さんの場合、UpToDateからある程度の情報を得てから参考文献を確認します。世界ではこれくらいの報告があるが日本では報告がない、世界での治療の選択肢はこれくらいあるが日本ではどうするか。複雑ですが、世界の状況を日本の状況に応用していくことも必要です。その点、UpToDateは門戸が広いですから、特に専攻医には情報の入口としてまずはUpToDateで調べるということを習慣にしてほしいです。

今後への期待

今後のUpToDateやウォルターズ・クルワーに期待することはありますか?

會田先生:UpToDateは、図表やアルゴリズムが理路整然としているので、研修医や専攻医と一緒に眺めて確認しながら、肩を並べて教えていくのにも非常に役に立っています。

自分でまとめるのは大変ですが、ソースがあって説明もしやすいのも利点です。今は英語が苦手な学生・研修医でも、UpToDateは題名から日本語検索ができるという点も利点ですし、ブラウザーの翻訳機能を併用すれば十分使用可能なレベルになっていると思います。UpToDateを利用して困ることはなく、むしろかなりありがたいと思っています。UpToDateは希少疾患などのカバー範囲が広く、「今知りたいのはそれだ」というところまで情報を得ることができます。

研修医への教育として、UpToDateも読んでレビューまで読み込むことが勉強だと伝えていますので、強いて改善してほしい点を挙げるなら、トピックの最後にある文献リストが、オリジナルなのかレビューなのかの区別が出来れば良いと思います。

*2021年のアクセス数より

福島県立医科大学附属病院について

福島県の福島県立医科大学附属病院は、39の診療科と778の病床を有する大病院です。明治4年(1871年)に開設された病院を祖とする、150年に渡る長い歴史を有しています。三次救急まで対応可能な救命救急センターを併設、2008年からは東北地方初のドクターヘリが常駐するなど、福島県内における中核病院であり、地域医療の中心的存在です。2015年には、高度被ばく医療支援センター及び原子力災害医療・総合支援センターに指定されました。

福島県立医科大学附属病院では、2013年よりUpToDateを導入。日々の診療における臨床意思決定ツールとして、そして医師の知識のアップデートツールとしても、UpToDateが利用されています。

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