学習の手段にエビデンスを活用
先生がUpToDateを利用されるようになったきっかけを教えてください
長谷川先生:私は医師3年目から6年目までの4年間、当院の総合診療科に在籍していました。当地域は高齢患者さんも多く、患者さん本人、ご家族、多職種や地域のかかりつけの先生方とも協力してさまざまな観点で、ベストな医療を提供する必要があります。当時、私の指導医だった先生からUpToDateのことを教えていただいたことで、実際の診療で利用する機会を得ました。
UpToDateを利用されるようになってから変わったことはありますか?
長谷川先生:当院では2017年からUpToDate Anywhereの利用が始まり、院内院外問わず、個人のスマートフォンやタブレット端末からでも容易にアクセスできるようになりました。しかし、当時はまだ後期研修医で診療経験が浅く検査や治療の知識が不十分な中、疾患に対する疑問点などを自分でUpToDateや英語の原著論文を調べて診療に活かすことは難しく、忙しさも相まって上級医に言われるがままの診療を行っていました。
医師5年目の時に、1年目の初期研修医への教育指導を行う「教育チーム」に配属されました。教育チームでは、日々の診療の疑問点を初期研修医の先生と一緒にUpToDateで調べて勉強し、新しく得た知見を実際の診療に活かして成功体験を積めるよう工夫しました。その頃から、エビデンスをより意識するようになりました。
しかし、全てエビデンスに則ることが最善な医療とは限りません。たとえば終末期医療の現場では、エビデンスよりも患者さんやご家族の望む最期を優先することを経験します。答えのないようにみえるケースでも、より広い視野でUpToDateなどで調べることによって医学的な情報を提供し、患者さんの尊厳やご家族の希望をよく聞き話し合い、意思を尊重しながら医療を提供する際の意思決定支援に役立てることができました。
若手医師のみなさんは「エビデンス」をどのように捉えていますか?
長谷川先生:私は医師5年目の時にチーフレジデントとなり、院内での勉強会の運営を担当するようになりました。研修医へは、疑問を抱いたらまずは日本語の医学書から自分で疑問を調べる習慣をつけ疑問を風化させないこと、その次のステップとして効率よく信頼性のある二次文献であるUpToDateを利用して調べるよう、指導しています。勉強会では臨床上の疑問に対するエビデンスを調べ、実際の診療に活かしていくことを目的としています。UpToDateを利用することで、研修医は従来疑問解決のため論文検索にかかっていた時間を短縮し、忙しい診療の中で疑問を効率的に解決できるようになりました。
現在私は、全国の初期研修医の先生方と共にUpToDateを使って疑問を解決するオンライン勉強会も開催しています。コロナ禍であっても、院内院外問わず全国の研修医の先生方へ少しでもUpToDateが身近なツールとなり、普段の患者さんへの診療に役立つきっかけになることを願っています。