診療科内のカンファレンスにUpToDateを利用
当診療科で1日2回行う入院患者さまのカンファレンスにおいて、UpToDateを利用します。たとえば、特殊な感染症の患者さまに対して一般的に行われる治療内容を検索する、膠原病に対する「ここ最近の治療内容」を検索する、というケースです。医師は各々がもつタブレットやスマートフォンで、カンファレンスの議題について調べ、「こう書かれている」といいながら共有する、という使い方です。
総合診療科は、「一つの領域の知識を詰めていけば日常診療ができる領域ではない」という特徴があります。さらに、当院は地域における最先端の部分を担っており、他院では判断が難しい症例の診断、治療法の検討および方向性の決定という役割があります。常に患者さまの病状に合わせて、その領域の知識を深めて診療を進めることが必要です。手元でいつでも調べることができるツールの存在は重要で、トピックの英文がとても読みやすく理解しやすい文章であるUpToDateは、多くの医師が使いやすいツールといえます。UpToDateのトピックの中でも「最新の診療アップデート(Practice Changing UpDates)」のセクションには、これまでの診療方法を変える可能性のある推奨治療法や最新情報が掲載されていて、非常に役立っています。
研修医のスキルアップにも活用
私は現在、愛知県内の2つの病院で研修指導医も務めており、それぞれの病院で教育カンファレンスを行っています。
カンファレンスの前半は、研修医の先生が提示される症例の診断に対し、私の診断方法や考え方をお伝えし、研修医の先生方の考えなどを引き出す時間です。後半は、特定の疾患に関しての知識を深める時間で、参加されている研修医の先生方と皆で、UpToDateを利用しています。
一つの症例、一つの疾患でも、原因や推奨される治療法など、医師が知るべきことはたくさんあります。たとえば、前半のトピックスとして「診断が難しい脳卒中の症例」が出たとします。後半では、脳卒中の症状や治療法、起こりやすい人物像など、皆が疑問を抱いた症例について各々が分担して調べ、10行程度で説明する簡潔な資料を作ります。それにグラフや画像を用いて皆で共有することで、知識を深めます。医学書に書かれている詳細な知識も必要ですが、UpToDateを利用すると「今の流れ」をより深く理解できます。以前は、こちらでまとめの資料を予め作成しましたが、人は「自分で調べる」という過程を経た方が、記憶に残りやすいようです。
そして何よりも、妥当なエビデンスに基づく情報であるということも、UpToDateの利用につながるポイントです。研修医の先生方は、研修期間が終了するとそれぞれ別の道を進みますが、「特定の病院のリファレンス」だけでは通用しません。汎用性が高く、世界中で利用されている情報を応用する、この能力を育てることも、研修指導医の役割なのです。