Provider searching UpToDate
ヘルス27 7月, 2021|更新された8月 10, 2021

UpToDate導入事例: 鹿児島大学病院

明治2年に設立されて島津藩医学校を前身とする鹿児島大学病院は、県内唯一の大学病院です。鹿児島県内には離島やへき地も多く、こうした地域への医療支援を担っています。県内のあらゆる地域の人々が最高の医療を受けられるよう、高度かつ先進的医療を提供しています。院内のIT化にも全国に先駆けて取り組んでおり、2018年4月からはシングルサインオンを導入し、UpToDateの利用促進を図っています。

鹿児島大学病院、病院情報システムと臨床意思決定支援リソースを連携し、高品質な医療を提供

30年以上前から病院内の総合情報システムを構築し、院内のIT化を推進してきた鹿児島大学病院。2018年頃から、総合病院情報システムを中心とした業務フローに臨床意思決定支援リソースUpToDate®を取り込み、医療情報システム全体の利便性の向上に取り組んできました。今回は、看護師としての経歴があり、現在は院内の情報システムのとりまとめ役を担う医療情報部 助教 岩穴口 孝先生に、現在の利用状況や今後の展望などについてお話をうかがいました。

「オーダリングシステム」の元祖。病院情報のIT化に、早くから取り組んできた鹿児島大学病院

「オーダリングシステム」はどのようにして誕生したのですか?

鹿児島大学病院では、病院業務を支える総合病院情報システム「Think(Total Hospital Information System of Kagoshima University)」を、1984年より開発・管理しています。今では全国でも一般的に使われている「オーダリングシステム」という言葉は、このThinkが始まりといわれています。医療情報部内には、診療情報管理部門と医師事務作業補助部門が設置されており、ITを活用した診療情報の精度管理から利活用まで、病院内の“情報”の流れを最適化する役割を果たしています。

「病院や大学の敷地外からでもUpToDateにログインできるのが、とても便利なようです。実際、THINKからのシングルサインオンの仕組みを取り入れた後では、UpToDateの利用率がぐんと高くなりました。」
鹿児島大学病院 医療情報部 助教 岩穴口 孝

鹿児島大学病院内では、どのようなシーンでUpToDateが使われているのでしょうか?

主に、診療を行う医師や研修医、医学科の学生も利用しています。研修医や学生の方が利用率は高そうです。多くは症状や疾患に関する文献検索のために利用されています。当院は、県内唯一の大学病院であり、複雑な疾患、希少疾患の患者さんも多く受診されることから、診療の合間の短い時間で、エビデンスに基づく情報を収集することが多いです。

当院では、医師だけでなく薬剤師もUpToDateを活用しています。薬剤師の場合、先進的な医療技術について、病院内の薬事委員会で審議を行うときなどに、「エビデンスに基づいた情報」を収集する目的でUpToDateを利用しています。

電子カルテとUpToDateをシングルサインオンで統合し、利用率を向上

UpToDateは診察中に総合病院システムThinkとどのように連携しているのでしょうか?

一般的に、病院情報システムはセキュリティ上の理由でクローズドなネットワークで構築されます。当院では、DenyAllow方式(安全性の保障されたサイトのみ接続できる仕組み)を採用し、この仕組みによりThinkからUpToDateへのアクセスを許可しています。こうすることで、同じ端末上で、診察中に電子カルテに入力しながら、UpToDateの画面を開いておき、臨床情報をいつでも検索することができます。

当院ではまた、2018年4月からはシングルサインオンという仕組みも取り入れています。分かりやすくいえば、電子カルテにログインすることで、そのままUpToDateにもログインできる、というものです。最初に、一度電子カルテにログインし、ユーザーごとに個人設定されたポータル画面からそのままUpToDateに同じアカウントでログインすると、次回以降は、ThinkからUpToDateの個人ページを直接開くことができます。病院内、あるいは大学構内から一度でもアクセスしていると、一定期間、病院や大学の敷地外からでもUpToDateにログインできるので、とても便利なようです。実際、シングルサインオンの仕組みを取り入れた後では、学外からとアプリによるUpToDateの利用率がぐんと高くなりました。

大学病院や医局には、疑問をすぐに質問できる先輩や上司がいますが、外部ではそれができません。そのような場合もスマートフォンなどからUpToDateにログインして、必要かつ有益な情報を効率的に収集しています。従来の病院情報システムは外部と接続しないのが一般的でしたが、それでは利便性が見い出せません。ある程度は制限をかけますが、DenyAllow方式やシングルサインオンのような仕掛けをすることで、安全かつ便利にUpToDateを利用することができます。また、情報システムの管理者の立場としては、院内で使用している様々なアプリケーションの利用状況を一元管理することで、医療情報システム全体のIT予算の最適化を図ることが可能です。

「臨床判断は先輩のアドバイスに影響されることがあり、情報が古かったり、非効率や医療安全のリスクにつながる可能性もあります。UpToDate という強力なクイックリファレンスツールを利用することで、医療者は意思決定をエビデンスに基づいて再検討することができますし、時間や労力の節約や患者ケアの向上にもつながります。つまり、EBN(Evidence-Based Nursing)を実現する環境を整えたいと考えています。」
鹿児島大学病院 医療情報部 助教 岩穴口 孝

利用者を増やしてエビデンスに則った看護を提供できるようにすることが今後の目標

UpToDateのコンテンツは看護師にとっても有用ですか?

私は現在、病院情報システムの運用管理を主な業務としていますが、以前は臨床の看護師として働いていました。日本医療情報学会の活動の一環として、他大学の医療者と論文の抄読会などを行うこともあり、UpToDateのコンテンツには、看護師にも役立つ情報がたくさんあると考えています。看護師にとって大きな課題は、業務効率化と生産性の向上です。UpToDateを利用すれば、二次情報を瞬時に検索し、疑問に対する答えを見つけることができます。根拠のない作業を検討したり、導入することもなくなります。世界中の著者や編集者が開発・審査した信頼性の高いコンテンツは、医療の安全性を高めるだけでなく、看護をよりスマートに、より効率的にするのにも役立ちます。

UpToDateでは日本語での検索は可能ですが、臨床トピック本文は英語で表示されます。アカデミアの看護師は、必要であれば英語でも問題なく読んでいますが、臨床の看護師にとっても、エビデンスに基づく医療情報を利用しやすい仕組みを考えていきたいです。

ダウンロード (.pdf)
Back To Top