課題解決により共感が生じ、学生と患者に新しい関係が生まれる
Hutchinson医師の学生に共通しているのは、彼らが医学分野に関心を持った理由の1つに医師と患者の関係性があるという点です。パンデミック中、学生はその関係を体験する機会がなく、また、画面を通してしか仲間と繋がることもできませんでした。それがデザイン思考により、学生は従来の臨床現場では考えられなかった方法で患者と繋がれるようになったのです。学生は、パンデミック中の医療供給における問題を特定し、ソリューションを導き出すために患者視点の思考で考える機会が得られました。
「共感とは、ヘルスデザイン思考の核となる原則、すなわち他者の経験を共有し、より健康なコミュニティをデザインする能力です」とHutchinson医師は述べ、さらに「重大な課題を解決する上で、コ・デザイン(参加型デザイン)やエンドユーザーとの連携は、デザイン思考にとってなくてはならないものです」と続けます。デザイン思考プロセスを用いる場合、学生は様々な利害関係者と対話し、彼らが解決しようとしている課題を異なる観点から検討し、そのソリューションを必要としている特定のペルソナを絞り込みます。Hutchinson医師の学生は、患者コミュニティと協力して彼らのニーズを評価することにより、課題解決および批判的思考に対し共感的アプローチを行うことができました。
デザイン思考で学生の臨床的意思決定スキルを磨く
リモート学習が行われた1年間に、デザイン思考は、学生が患者に関連する課題解決に批判的思考スキルを発揮するための1つの方法として確立されました。「私たち医師が常日頃から活用しているこれらのスキルを磨くこと、つまり情報を集めること、共感すること、課題を理解し、患者さんがその課題をどう解決するかについて考えることが重要です」と、Hutchinson医師は述べています。
「デザイン思考は、医療について重大な意思決定を行う際に、患者にどう対応するか、学生が学ぶのに役立ちます。たとえば、デザイン思考により、学生はある病気に対する最善の治療を考える代わりに、患者個人のこと、およびその患者にどの治療が有効かについて考えた上で処方を決定するというアプローチができます」と、Hutchinson医師は語ります。3人の学生は、デザイン思考授業により、患者の考え方から学んだことを応用し、チームワーク活動により他者の意見や考え方に耳を傾け、建設的なフィードバックを行うという、他にない経験を得ることができたのです。
詳しくは、ウェビナー(録画)『Implementing Design Thinking in Medical School to Develop Creative Problem Solvers』をご覧ください。